獅子裁乱れ歌番外編「初めての2月14日」
「明日は2月14日か・・・。毎年毎年面倒だけど、張り切って作るか」
私がこの獅子裁町(ししさばきちょう)に来てから初めての2月14日。初めてということもあり少し張り切っている。
「よし、後はこれを冷やして出来上がりっと。……真美ってチョコ大丈夫なのかな」
まぁいいか、こういうのは気持ちだけなもんだし。そう思うことにした。
翌朝2月14日当日。
「上手く固まってるし、味も昨日確かめた時は大丈夫だったからいいってことにしとこう」
出来上がったチョコをラッピングして、家を出る。っとそこで違和感を感じた。町の空気がいつもよりピリピリしてる感じがするのだ。まぁ、今日は2月14日だからなー。
などと楽観的に捉えてたら急に後ろから殺気を感じた。
「香奈先輩!この気持ち受け取ってくださーい!」
そのセリフとともに物を投げつけてきた。
私はそれを難なく避けた。ちらりと元いた場所を見るとそこには十数個のましゅまろが落ちていた。
なんでましゅまろ!?
そして投げてきた人を見ると、男子学生(多分中学生かと)が膝をついて嘆いていた。
よく意味がわからなかったので私はその場をすぐに去った。
その後も学校に着くまでに同じようなことがあったが、学校内ではその行為はパタリとやんだ。
なんだったんだろ、あれ。
授業中ではもっぱらそんなことばかり考えていたわけではない。そんなことよりも、いつも絶対に休むことのなかった真美が休んでいる。そのことが気がかりだった。
すぐに渡せると思ったんだけどな。
ちらりとチョコが入ったカバンのほうに視線をやる。
真美の家知らないんだよな~、どうしよっかなこれ
などと考えることもしばしばだった。
授業が終わり放課後。この日は結局真美は学校に姿を現さなかった。
はぁ~、結局これどうするかな。
消えない悩みを抱えながら校舎内を歩いていると、学校一の天才様朽木燐(くちきりん)に遭遇した。
同じ学年にも関わらず彼と会うのはほとんどありえない。特別待遇とか何とか、まぁ、詳しいことは分からないし知るつもりもないけど。
「お前はまだ残っていたのか。まぁ、お前は相当好かれているからな無理もないか」
おや?なぜか天才様が優しいぞ?いつもなら怒鳴り貶されそうなもんなんだけどな。
「今日はお前の相方は休みか?」
やはり可笑しい。天才様は会話を好んでするような奴じゃなかったはず、何か裏があるのか?
「……休みだけど、それがどうかしたの」
「ふん、そういぶかしがるな。俺にも他人に気を抜きたい時もある」
本当に何を考えてるのか読めないなこいつは。ただ何も考えずに言葉だけ取ると私に気があるように聞こえてしまう。
いや、ありえん!そんなわきゃない、それに例えそうだとしても私が嫌いだし。
「お前、確かこの町に越して初めての2月14日で間違いないな?」
いまいち質問の意味が分からない、それを聞くことがなんになるんだろうか?
「そうだけど、それがどうかした?……まさかあんた私のこと」
「ありえんな。ふん、一度自分で否定しておいて結局聞いてくるとはな。俺が教えてやろうかと思ったが興が削がれた。せいぜいこの町のルールを体で感じるんだな」
そう言って朽木燐はいつも通りの空気をまといこの場から去っていった。
「なんだったんだ、さっきのは。まぁいいや帰ろっと」
校門を出ると途端に殺気を感じた。
え?また今朝みたいなやつ?
さっと身構える、すぐに動けるように。
なんなのか分からないけどあんな速いの受けたくないしな~。
「香奈!この気持ち受け取って!!」
え?
つい声に反応してワンテンポ逃げの動作に遅れた。
「いだだだだだだだ」
十数個ぐらいだろうか何かがマシンガンのように私の体に全弾ヒットした。
声がした方に顔を向けるとそこにはワクワク、のようなソワソワのような、とにかく期待した顔で私を見ている真美の姿があった。そして私に当たったものはチョコだった。地面に落ちているもののその一つ一つが包みにくるまれている為衛生上全く問題なかった。
その一つを手に取り、包みを取って口に放り込む。
「あ、美味しい」
そのチョコは文句なしの美味しさだった。それにしても何故?
「よ、よかった~。受け取ってもらえて。今日一日かけたかいがあったよ」
真美の顔は満足そうだった。そして私はというと、やっぱりわけが分からなかった。
まぁ、その後すぐ真美から2月14日という日について聞かされた。
なんでもこの町では豆まき行事がなく、この日に思いを込めて作ったお菓子を、受け取ってのセリフとともに相手にぶつけるる。この時に相手に当たらなかったらその時点で思いを伝えることは出来なくなる。
当たった場合はその内の一つでも相手がすぐに食べれば込めた思いが伝わるということらしい。持ち帰るとか、食べなければ思いは伝わらないということでもあるらしい。
要は、思いを相手に物理的にぶつける日ということらしい。
私は変な慣習だな~と思わざるを得なかった。
「あ、そうだ。真美これからもよろしくね」
そう言って私はラッピングしたチョコを渡した。
「これは何?今日は私誕生日とかじゃないけど」
真美は本当に不思議そうにそう言った。
「これは、私が育ったとこでの今日の日の慣習だよ。あ、やっぱりこっちの慣習じゃないと受け取れないかな?」
「いや、知らなかったんだからそれはしょうがないよ。正直なところ、香奈からもらえるなんて思ってなかったからとっても嬉しいよ」
真美は本当に嬉しそうにそう言った。
「でも、来年からはこっちのやり方でやって欲しいな」
「うん、忘れないよ」
私達は笑顔で誓い合った。
――あとがき――
うああああああ、2月14日に更新するはずがああああああ。
本当に申し訳ない、ここはお詫びにAVトークでも!
はい、すみません、遅刻してさらに馬鹿なことはしませんよぉ
ちょっと気を取って、今回は一応バレンタイン企画として小説を書きました。
バレンタイン、甘酸っぱい響きがするけど私にとっては所詮空想。
まぁ、単純にチョコ渡してはい終わりってのはどうなんだろうと思って、
ああそういえば節分書いてないなと思いまして、なら節分×バレンタインでも書こうじゃないかと
でもどうやって合わせるか。そんなことをずっと考えた結果が間に合わないという惨状を招いたわけですね。
結局あんな感じになったわけなんですが。
ちなみに本編中の朽木燐、あの人全部当たってるけど持ち帰るという荒行やってる人ですからね。
当たると相当痛いですよwなにしろゲフンゲフン
まぁ、なにはともあれお送りしました獅子裁番外編。
今回はこんな感じでお開きにします
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