獅子裁乱れ歌第16話「飛ぶのはやっぱり・・・」
「いや~、ずいぶん寒くなってきたね」
紅葉の時期もすぎ、散っていく季節。私は寒いという当然のことを口にした。
「えっ、・・・えーと、香奈、それ冗談だよね?でも、ギャグにしては笑えないかも」
だが、どうやら真美にとってはそんなことはないらしい。
そして真美が冗談だよね、と聞くこともわからなくはない。
そのことは二人が着ている衣服が物語っている。
私は冬服にその上に一枚羽織っている格好なのだが。
真美は夏服の格好なのだ。見ているこっちが寒くなるぐらいなのに本人はそんなことはないらしい。
それだけなら、真美が可笑しいのではと思ってしまうが。
実を言うと学校で冬服を着ているのは私と朽木燐、あの天才君しかいないのだ。
もっとも天才君はなぜかどんな季節だろうと絶対に冬服しか着ていない、真夏日だろうが彼が冬服以外に袖を通しているところをみたことがない、だから天才君を見ているときは逆にこっちが暑くなる。
まぁ、そんなわけで実質衣替えを行ったのは私だけ、ということで、この町からすれば可笑しいのは私のほうだったりする。
もっとも、なぜそんなことが起こるのか、なんてのは私は知らない。興味ないし。
などと思いながら歩いていると、どこか遠くから近づいてきているような声が聞こえてきた。
私は嫌な感じがして真美に急ごうと促そうとしたら、奴が現れた
「ふん、見つけたぞ、小娘。今日という今日はぶちのめしてやる」
そういって、変態は屋根から飛び降りる。
が、突如として現れた巨大な鳥に捕まり、
「なんだ、貴様、我をなんだと思っている、離せ、離さぬか!」
鳥は聞く耳もたず、そのまま変態を連れ去っていった。
「・・・あー、っと、そういえば真美、この間のドラマ見た?」
私は今のを見なかったことにして、真美と一緒に再び歩き始めた。
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